新人ナース達が配属されて一生懸命仕事を憶えようと頑張っています
プリセプターさんはじめ、先輩ナースも親身に教えています
でも先輩ナースから「できていない」って言われているのを聞いて働くのがこわくなった
仕事がつらい、やめたいという声を毎年聞きます
働き始めたばっかりで、知らないことやできないことばかりなのは当たり前ですよね
先輩ナースも新人ナース達が困らないようにしっかり指導したいのに
「私たちの時はもっと大変だった」とつい言ってしまったりしていませんか?
昔から看護師の職場では心理的安全性が低い傾向を感じていました
心理的安全性が大切
最近に耳にするようになってきました
私たちが新人ナースの頃は指導=怒られる的な感じで心理的安全はあまり無かった気がします
先輩ナースに見られていると緊張して息苦しくなっていたものです
心理的安全性は高い方が仕事のパフォーマンスがあがります
心理的安全性が高いと、新人ナースは安心して仕事にチャレンジできます
先輩ナースも、新人ナースの成長とともに仕事の負担が軽くなります
みんなが快適に仕事ができる職場
そんな職場で働きたいと思いませんか?
総合病院で30年以上看護師を経験しています
プリセプターや実習指導なども経験しました
職場の雰囲気をよくするためにはどうしたらよいのか
新人さん・プリセプターさん両方の悩みを聞いてきて感じたことをお話します
心理的安全性とは
「心理的安全性(psychological safety)」とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。
ハーバード大学で組織行動学のエイミー・エドモンドソン教授(Amy C. Edmondson)が最初に提唱したといわれています
エドモンドソン教授は心理的安全性について、「チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに 安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と定義しています。
「信頼」と似ていますが、信頼は個人同士の現象で、「心理的安全性」はチーム・組織など集団レベルの現象です
心理的安全性が高いメリット
①個人の能力を発揮できる
②仕事の効率が上がる
③離職率の低下
心理的安全性が高くなると上記のことが期待できます
①個人の能力を発揮できる
心理的安全性が高いと、メンバーは失敗や批判を恐れることなく考えを発言することができます
知らないことで批判される心配がないため積極的にわからない事を質問し教わることができます
効率よく教わることができ、個人のスキルアップや能力を発揮することが期待できるでしょう
チームに積極的に関わることで、仕事ぶりを認められ信頼感もうまれます
自分を尊重してもらえることを感じると責任感が芽生え、「もっと良くする方法はないか」など自主的に行動することが期待できます
②仕事の効率が上がる
心理的安全性が高い職場では、無知・無能と批判をされる心配がないため不安なことをそのまま放置せず積極的に質問することできます
わからないことがあっても、スムーズに質問して周囲にサポートしてもらえるでしょう
正しい手順を教わり、ミスを未然に防ぐことができます
良いやり方はチームで共有して、クオリティを上げることが可能です
色々な率直な意見を聞くことができるので、業務方法がアップデートしていきます
また、不安も少なく業務に集中できるためミスも起こりにくくなります
ヒヤリとする場面も、ほかのメンバーからのサポートで未然に防げたりします
心理的安全性が高いと発言もポジティブでモチベーションも高く、楽しく安心して働くことができます
③離職率の低下
離職理由の多くは、人間関係や仕事のやりがいのなさです
心理的安全性の高い職場では、無知・無能・邪魔と思われる不安がありません
自分を尊重して扱ってもらえるため、職場への満足度が高くなります
批判をする怖い先輩・上司ではなく、親身に接してくれる先輩・上司は魅力的で良き目標となるでしょう
先にも述べたように、心理的安全性の高い職場は個人の能力を発揮できるため、日々成長していく充実感を得られやすく仕事への満足度が上がります
人間関係が良好に保たれ、仕事のやりがいのある職場となるため離職率が低下します
心理的安全性が低い時はどうなるのか
心理的安全性が低くなると、離職者を増やすと考えられます
「一生懸命やっても、どうせ無駄」と仕事への熱意・モチベーションが低下します
この職場にいる意味があるのかと悩み離職を考える人が増えるでしょう
仕事の効率も悪く改善しないため、業務は大変になります
そのままにしておくと、インシデントなどのトラブルにもつながります
さらに離職による業務負担の増加が加わり悪循環していくことでしょう
心理的安全性を調べる7つの質問
Google のリサーチチームによると、心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低いという特徴があったそうです
エイミー・エドモンドソン教授がチームの心理安全性を調べる為の質問をご紹介します
①チームの中でミスをすると、たいてい非難される
②チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える
③チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある
④チームに対してリスクのある行動をしても安全である
⑤チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
⑥チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない
⑦チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる
ポジティブな要素が多いほど、心理的安全性が高い職場といえます
心理的安全性の低い職場あるある
ミスをすると個人を責める
複数の先輩ナースがナースステーションでおしゃべりしています
おむつ交換の時間になったのでスタッフ全員準備しています
おしゃべりしている先輩ナースにも声を掛けますが
「先に行ってて」
と言われます
残りのメンバーでおむつ交換に行きますが、人数が少ないためはかどらず焦りがでます
おしゃべりをしていた先輩ナースはおむつ交換が終わりそうな頃やっと動き出します
そしておむつ交換が終わった患者さんの足が重なっているのを見つけます
「師長さん、これ見てください!」
師長さんに現場を見せて、おむつ交換をしているスタッフの所へきます
「〇〇さんのおむつ交換したのは誰?体位交換がきちんとできていないからちょっと見に来て」
患者さんの足が重なっていて時間がたっていた為かうっすら皮膚が赤くなっています
見つけてそのままにしていた先輩ナースはおむつ交換をしたナースにインシデントを書くよう言います
おむつ交換の業務をしなかった、患者さんの体勢を直す必要があると気が付いているのにそのままにしておいた先輩ナースは何も言われない
先輩ナースの分までおむつ交換を頑張っていた後輩ナースは注意をされインシデントレポートを書く
先輩ナースがきちんと業務に入っていてくれたら
体勢を直さないと皮膚トラブルにつながると気が付いた時に体位を調整してくれたら
未然に防げていたかもしれません
後輩ナースはどんな気持ちでしょうか?
仕事をしていると「不公平だな」と感じる場面があります
一部の人の意見しか認められない・ミスの原因を検証せず批判される状態だと、状況は改善しませんし仕事に対するモチベーションも低下しますよね
心理的安全性を高くするためには
①明確な目標
心理的安全性を高くするためには、チームの目標を明確にすることが大切です
チームの目標がはっきりすることでメンバー個人の役割が明確になります
個人の役割を行うことで、仕事に意義を感じることができます
目標管理にはOKR(Objective and Key Result)を利用されることが多いです
OKRは、元インテルCEOのアンドルー・グローヴが1970年代に導入したのが始まりと言われています
引用: ウィキペディア
①組織全体の目標の決定
②組織の目標をふまえ、チームの目標を設定
③チームの目標から、個人の目標をたてる
せっかく目標をたてても途中で忘れてしまいがちです
そうならないためには週1~月1回にミーティングを行い目標や進捗状況の確認を行います
状況を把握し、自信がついたり課題を再認識することができます
②質問しやすい環境
心理的安全性を高めるためには対人リスクの排除が重要です
心理的安全性が高いと、上司・メンバーから無知・無能と思われることを恐れず疑問や困ったことがあるときには率直に質問・相談できるようになります
スタッフ同士でサポートをすることで成功体験を経験するでしょう
効率的に仕事を憶えることが出来るため新人が成長しやすい環境になります
上司や先輩も、何を教えればよいのか判断しやすくなります
③個人を尊重する
心理的安全性が高いチームとはすべてのメンバーが認められ受け入れられている状態です
仕事でお互いを信頼し、弱い部分を理解して補いあえる環境にあります
共通の価値観をもち受容的に受け止めてもらえるため、不安や懸念事項を伝えることができます
チーム全体で不安なところをカバーできるので良い解決方法がでたり改善しやすい環境といえます
チーム全体で共通の価値観をもち仕事を行い、メンバーへの感謝・信頼を感じることができるでしょう
具体的には1on1ミーティングやピアボーナスが効果的だと言われています
1on1ミーティングとは、上司が部下の育成・モチベーション向上のため週1回~月1回程度行われる個人面談のことです
今まででも指導目的で個人面談が行われることがありました
個人面談では部下の仕事の取り組みに対して評価・指導が行われます
しかし個人面談と違って1on1ミーティングでは、上司は部下の意見に対して傾聴・共感に徹して、本人の自己解決を促します
ピアボーナスとは会社からの報酬ではなく、メンバー同士で感謝や評価のメッセージを添えてポイントなどを送りあうシステムです
ピアボーナスを導入することで、スタッフ同士がお互いを誉めあいコミュニケーションが円滑になる効果があります
感謝や共感の気持ちを大切にして、共通の価値観をもつことが心理的安全性を高くするために重要です
まとめ
心理的安全性が高い職場が良い、とはいっても自分だけでは心理的安全性を高くすることはできません
チームのメンバー一人一人がお互いを認めあい尊重し、共感・感謝をする気持ちが大切です
メンバーが同じ価値観を持つためにも、共通目標は必要となってきます
目標は同じでも、達成するための方法は一人一人違うかもしれません
違う意見でも否定せず受け止め、より良い選択をするための材料になればグレードアップした内容になるでしょう
活発に提案・意見交換がされると、より良い意思決定や方法の提案が可能となります
同じ仕事内容でも、自分が納得してやるか、否定的な考えで「やらされている」と思うのかで達成感や疲労は変わってきます
心理的安全性の高い職場環境は、メンバー一人一人が責任感をもって仕事にやりがいが感じられる優れたチームを作ることができることが期待できます
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