「だんだん病院で勤務するのも体力的につらくなってきたな」と50代で転職を考えている看護師のあなた
訪問看護・訪問診療に興味はありませんか?
でも、50代看護師で新しい分野に挑戦するのは、私にできるのかしら?
訪問看護や訪問診療ってどういうことをするのでしょう?
この記事を読んでわかること
・訪問看護・訪問診療とはどのようなところか
・50代看護師で訪問の仕事へ転職可能なのか
・訪問のお仕事のメリットとデメリットとは
・50代看護師が訪問の仕事で求められているもの
看護師歴30年以上で訪問診療を17年経験した筆者が、訪問看護・訪問診療でどのようなことをしていたのかお教えします
病院以外の働き方を知ることで、転職選びの幅が広がります
自分にあった職場探しの参考にしてください
訪問看護・訪問診療とはどのようなところ?
訪問看護とは
訪問看護とは、病気や障害があって住み慣れた自宅で暮らしたい方を対象に、病院以外の自宅や施設で看護を提供するお仕事です
健康チェックや服薬管理・指導、食事・排泄・入浴などのサポート、排痰ケアや吸引、カテーテルの管理、創処置など必要に応じてケアを行います
中には人工呼吸器を装着して自宅で生活されている利用者さんもいらっしゃいます
一日の流れ
8:30 ミーティング 一日の予定の確認、連絡事項の伝達など
訪問予定にそって、訪問先へ移動します
私がいた事業所は9:00~16:30くらいの時間帯で訪問予定を入れていました
昼食援助のケアが入る場合などは、昼休みの時間を調整して対応したりする場合もあります
訪問業務以外にも、担当者会議に出席したり、相談業務をすることもあります
大体17:00くらいには事務所に戻ります
後片付けをしたり、記録をしたりして17:30に業務終了です
24時間対応のステーションだと交代でオンコール(電話待機)があります
事前に状態悪化時には電話していただくよう利用者さんに伝えてあります
要請があれば訪問して対応します
(出典:日本看護協会「2014年訪問看護実態調査報告書」
訪問診療とは
訪問診療とは、通院が困難な患者さんに対して、訪問して医療を行うものです
定期的に訪問し、治療・看護・健康管理を行います
緊急時には臨時訪問を行い、自宅での治療が困難な場合などの入院先の調整も行います
お薬が処方される場合には、処方箋を発行します
薬を家族が取りに行くのか、訪問薬剤のサービスを利用するのか確認します
医療保険・介護保険で可能なサービスの知識を患者さんやご家族に説明する機会もあります
介護サービスや訪問看護と連携して、自宅で療養される患者さんのケアを行っていきます
一日の流れ
8:30 ミーティング 一日の予定の確認、連絡事項の伝達、必要物品の準備など
訪問予定にそって、訪問先へ移動します
私がいた事業所は9:00~16:30くらいの時間帯で訪問予定を入れていました
一件の滞在時間が訪問看護より短いので、訪問件数が多いです
グループホームなどの施設にも訪問することがあります
訪問業務以外にも、担当者会議に出席したり、相談業務をすることもあります
大体17:00くらいには事務所に戻ります
後片付けをしたり、記録をしたりして17:30に業務終了です
訪問看護と違い、個人記録は医師がカルテを記載するため特にありませんでした
そのため記録作業は少なめです
24時間対応のクリニックだと交代でオンコール(電話待機)があります
事前に状態悪化時には電話していただくよう利用者さんに伝えてあります
要請があれば訪問して対応します
看護師の人数が少ないことが多く、オンコールの回数は訪問看護より多くありました
オンコールの回数は訪問看護が4~5日に一回に対して、訪問診療は2日に一回でした
しかし事業所によってはドクターのみオンコールされる場合もあるそうです
訪問看護と連携されている場合、訪問看護のナースが先に臨時訪問されるケースが多いです
雇用形態・給与
私の勤めていた法人では、病棟看護師より5万円ほど少ない給与でした
理由は「夜勤がないから」です
ボーナスも夜勤がないと若干少なめでした
病棟で夜勤をすると、月に5~6万になりますが、オンコールの待機手当は一日1500円でした
月に15日オンコール当番をして、22500円です
臨時訪問があれば別に時間外手当がつきます
オンコール待機だと、要請があれば訪問可能な地域にいる必要があるため勤務時間外の拘束感があります
50代看護師で訪問の仕事へ転職可能なの?
50代で体力的についていける?
体力的には病棟勤務に比べれば楽でした
寝たきりの方のケアは必要に応じて複数人訪問をしたり、ヘルパーさんと協力して行っていました
移動も車メインでしたので、歩行距離は病棟時代の半分以下でした
大変だったのは、階段のない団地の5階に訪問するときなどくらいでしょうか
忘れ物をしたりすると、何往復もして息切れしていました
夜勤もなく、日曜祭日が休みの事業所でしたので、盆正月・ゴールデンウイークもお休みでした
(訪問診療では振替訪問を行っていましたので、前後は訪問件数が増えて大変でしたけど)
ただしオンコールがありましたので、臨時訪問や夜間対応でいつ呼び出しがあるかわからない状態でした
一人で訪問するのは不安
訪問診療は医師に同行するため一人で訪問することはありませんでした
訪問看護は基本一人で訪問しますが、慣れない間は同行訪問での練習をして一人立ちしていく方針の事業所が多いと思います
私がいた事業所は、新規訪問や重傷の方はなるべく協力して複数で訪問していました
方向音痴でも大丈夫?
同僚はすごく方向音痴でしたが大丈夫でした
昔はゼンリンの紙の地図を頼りに訪問していましたので大変でしたが、現在はスマホの位置情報やナビがあるので自分の位置がわかり訪問しやすくなりました
カーナビが付いている訪問車を準備してくださる場合もあります
方向音痴でも慣れると大きい通りや目印がある決まったルートで、遠回りでも確実に到着する方法を自分で開発していました
訪問時間に遅れそうな時も、相手先に連絡をきちんとするなど対応していました
事情を説明すると「大丈夫ですよ~」と利用者さんたちも優しくしてくれましたよ
訪問のお仕事のメリットとデメリット
メリット
自分のペースで仕事ができる
病棟で人間関係に疲れた看護師さんほど「自分のペースで仕事ができてよかった」と言われます
決まった訪問時間はあるものの、利用者さんと看護師の都合が合う所に時間調整可能な所が訪問系の良いところです
一人で移動時間も楽しくて、好きな音楽を聞いたり、考えをまとめたり、お天気のいい日は気持ちがいいドライブだなと思ったり自分なりの楽しみ方があります
夜勤なし、日曜祭日休み家庭と両立しやすい
病棟勤務時代は日曜祭日の休みをもらうのも他のスタッフに気兼ねして言いづらかったです
子供たちに日曜日「また仕事~?」と言われることもありません
オンコールで出勤しても、訪問が終われば帰れるので、休日丸一日家族といない状態はあまりありませんでした
患者さんとじっくりかかわれる理想の看護ができる
病棟時代はとにかく業務に終われる状態で、ゆっくり患者さんの話を聞くこともありませんでした
たまに患者さんとコミュニケーションをとっていると「サボってる」と言われるし
訪問系では患者さんは一人だけなのでじっくり向き合えます
中にはびっくりするような経験をしている患者さんもいました
患者さんの話を聞くのが楽しみだったりします
赤ちゃんやペットがいるお宅では、なでなでしたりして癒される機会もありました
密かな楽しみです
デメリット
臨機応変な状況に合わせた対応力
訪問では基本的に一人で対応することになります
訪問先で症状悪化などがあった場合、状況に合わせた判断が必要になります
「本当にこれでよいのだろうか?」と不安になるかもしれません
不安があれば、電話などで他のスタッフや主治医に報告・連絡・相談してベストな対応をしましょう
オンコールがある
訪問看護・訪問診療の業務時間以外に状態悪化した利用者さんがいれば電話で相談があります
必要に応じて、臨時訪問になる場合もあります
電話待機のオンコールを看護師が交代で毎日行う必要があります
オンコールの時は、休日であっても旅行など遠出ができなかったり、飲酒して運転できない状態にならないようにしておく必要があります
コミュニケーションのむずかしい方もいる
利用者さんの中にはコミュニケーションをとることが困難な気難しい方もいらっしゃいます
家族でも拒否的だったりと困っているケースもありました
適切なケアを提供できるよう、上手にコミュニケーションをとる必要があります
担当者会議で話し合ったり、他事業所とも連携してケアしたりします
家によっては不衛生
体が不自由で片づけられないとか、動物を飼っていてお世話できず不衛生な環境の場合もあります
自分のユニホームや靴下などが汚染してしまうこともあります
利用者さんに不愉快な思いをさせず、自分も汚染しないようにカバーを持参したり対策が必要なお宅もあります
50代看護師が訪問の仕事で求められているもの
看護師としての経験
50代の看護師さんはどこで仕事をしてきたとしても、今まで経験してきたことがあります
適切なアセスメントにより悪化の兆候を発見して入院に至らずにすむケースもあります
普段から利用者さんに接していると、違和感を感じることがあるでしょう
違和感こそ、急変の前触れだったりします
その気づきこそ経験からくるものだと思います
利用者さんが元気にご自宅で過ごすためには必要なスキルです
コミュニケーション能力
俗にいう「おばちゃん」な50代、おしゃべりが得意な人も多いです
おしゃべりが得意ではなくてもいいのです
お話することだけがコミュケーションではありません
傾聴することでもコミュケーションといえます
50代の雰囲気が利用者さんに安心感を与えたりします
私も得意ではおしゃべりは得意ではありませんが、若いころに比べれば話しかける根性はついてきたと思いますし、どちらかといえば話を聞く方が好きです
仕事で自分も楽しめる、素晴らしいお仕事だと思います
利用者さんやご家族とよい人間関係ができていることで協力的に接してくださいますので、仕事もやりやすくなるでしょう
どうする?「訪問看護は利用しない」という家族と導入をすすめるケアマネの間で悩む看護師が考えること
主婦スキル
さまざまなお宅へ訪問します
家の中では主婦目線での気づきもあります
テーブルの上に見慣れないお薬があって「調子が悪かったのかな?」と気が付く場合も
利用者さんは腐った食べ物を食べようとしたり、足元が散らかっていて転倒の危険があることもあります
「このままでは不便だろうな」とか「危ないな」と気が付くことができるのは看護師と主婦の両方の経験があればこそです
よく気が付く看護師として働けると思います
まとめ
私が勤めていた事業所の話ですので、他にも特色のあるよい事業所がたくさんあると思いますが訪問系のお仕事のことが少しでもイメージできたでしょうか?
病院の厳しいシステムの中で仕事するのがしんどかったという看護師さんは訪問のお仕事をするとペースを乱されることが少ないため「わりと合ってるかも?」と思う人がいました
外に出るので、季節の移り変わりを感じたり、楽しみがたくさんあります
訪問看護や訪問診療は病院とは違った、やりがいやおもしろさがあると思います
転職活動の参考になれば幸いです
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